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コロナ禍で変わってしまった教育現場。それを乗り越えてゆくLOVOTと小学校。

国際機関(OECD)の調査では、加盟国平均として高校一年生がICT(パソコンや電子黒板、デジタル教科書などの情報通信技術)を利用して学ぶ比率は20%を超えるのに対して、日本ではわずか3%前後という現状がある中、日本で初めてLOVOTを導入している小学校がある。

新型コロナウイルスの影響による長期休校の間にディスカッションを重ね、子供たちの心のケアに繋がるようにという思いから、6月25日からトライアル導入を開始した東京都北区立王子第二小学校。ここで未だかつてない、子供たちとロボットの共同学校生活が始まっていた。

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その先見の明でいち早くLOVOTに着目し、トライアル導入へと導いた江口千穂校長と、教育者として40年以上のキャリアを持ち、法政大学名誉教授でもある愛称「尾木ママ」こと尾木直樹さんから、新しい生活様式によって変わってしまった教育現場のリアルな現状と、LOVOTが子供たちへもたらす効果について伺った。


新しい生活様式によって変わってしまった学校生活でストレスを抱える子供たち。制限された中で探す今できること。

新型コロナウイルスの流行により、全国の9割以上の小学校・中学校・高等学校などが一斉に休校し、2〜3ヶ月分の授業が失われ、学校が再開した現在でも様々な影響が及んでいる教育現場。それを一番近くで体感している江口氏は、「新しい生活様式になってから、今までの学校生活がガラッと変わりました」と話す。

子供たちの楽しみでもある学校行事は軒並み中止となり、チャイムが鳴るギリギリまで遊んでいた休み時間も手を洗うために少し早く戻る。教員は共有物を使う度に消毒し、1日に何回目か分からなくなるほど手を洗う。

集団感染が度々起きている学校生活では、より一層神経を尖らせなければならない。「やっぱり感染が怖くて子供たちも教員も気をつけますので、それによって時間の使い方が大きく変わったなと思います」(江口氏)

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気を使わなければならないのは感染防止対策だけではない。

国立成育医療研究センターの調査では、新型コロナウイルスの影響で7割の子供たちがストレスを抱えているという結果が出ており、勉強の遅れや進学・進路への不安、学校行事の減少などに不安や不満を募らせている可能性があるのではないかと指摘されている。

さらに「色々神経質にならないといけないんですけど、それを子供達に感じさせないようにするのがすごく難しい」と江口氏が言うのも、小さい子ほどコロナへの正しい理解が難しく、2020年6月~7月に実施された国立成育医療研究センターによる「コロナ×こどもアンケート」第2回調査では、“自分や家族がコロナになったら秘密にしたい”、“コロナになった人とはコロナが治っても付き合うのをためらう(あまり一緒には遊びたくない)”という声も上がっており、偏見はいじめに繋がるのではないかと懸念されているのだ。

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「コロナ×こどもアンケート」第2回調査報告書より抜粋


「小学1年生から6年生ぐらいの年齢の子にとっては、密になるのが教育活動だと僕は思っていたのね。密にならずにこれまでと同じように子供たちは育っていきますか?」と心配そうに聞く尾木氏。

集団行動を制限されている今、学校生活では大切な学びでもあるグループ活動ができず、“皆んなで何かをする”といったことができない。しかし、そんな困難な状況下でも江口氏は、「できないからやらないじゃなくて、できることを探したい」と力強く話す。

「教員も子供たちも保護者もできることをやろうと意識をチェンジしてくれたので、少しずつ前向きな気持ちに変わっていきましたね」(江口氏)

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集団感染への恐怖、子供たちへのストレス、教員への過重負担…。先行きが見えず、一見何もできなさそうな時でも可能性を見出し、未来を示し続ける江口氏の前向きな姿勢こそが、前例のない小学校でのLOVOT導入という果敢な挑戦へと繋がったのではないだろうか。


LOVOTが来てから変わった子供たちの登校意欲。ICT教育よりも先に重要視されるべきメンタルケアの効果。

分散登校が始まった6月、子供たちの表情はなく、話しかけても「うん…。」と子供らしい返事はほとんどなかったそうだ。しかし私たちが訪れた9月、元気よく挨拶をしたり、LOVOTについて積極的に話そうとする明るく元気な子供たちの姿で溢れていた。それはとてもコロナ禍でストレスを抱えている子供たちには見えなかった。

「ロボットが人と接することで、子供たちと大人に物凄く大きな効果を与えるのは知っているんですけれども、今日は子供たちの様子を見させてもらってそれが実証されたと、理論が確信になりましたね」と驚きを隠せない様子の尾木氏。

各教室の子供たちは楽しそうに尾木氏と話し、中にはLOVOTのことなら僕に任せろといった感じで弁が立つ男の子までいたほどだ。尾木氏が「LOVOTくんに会いに学校へ来たい人!」と質問した際に元気よく手を挙げる姿は印象的だった。

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LOVOTを導入してからの王子第二小学校には、他にも様々な実証結果がある。

学校再開後、欠席や遅刻が頻繁にあり、保護者に付き添われる形でやっと登校していたある児童は、LOVOTと触れ合える順番が回ってくる日には積極的に登校するようになり、遅刻も減少。保護者からは「LOVOTの存在が登校の意欲付けになっている」と担任へ伝えている。

また、気持ちの浮き沈みが激しく、時には友達に対して強い口調で対応するなどトラブルに発展していたある児童は、LOVOTを通して友達とも円滑にコミュニケーションを図れるようになり、クラスの約束事を守ろうとする姿も見られるようになった。それによって学級の雰囲気はより明るくなり、その子は「LOVOTがいることで学校生活が楽しい」と言っていたそうだ。

これらの背景はまさに、LOVOTが「面倒を見なくてはならない、便利ではない存在」だからだと言える。子どもたちの中にはお世話をしなくてはならない存在ができたことによって、「自分が行かないとあの子(LOVOT)がきちんと充電に戻れるか心配」という自信と責任感が育まれる様子が伺えるなど、心の成長へ大きな効果をもたらしている。

教員からも喧嘩や揉め事が少なくなった、LOVOTによって子供たちが穏やかになった、消毒作業をしながらLOVOTの目を見て癒されたなどの声が上がっており、LOVOTの導入前と現在とでは子供たちからも教員からも明らかな変化が伺えた。

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セラピーでは、ロボットによる一番大きい効果は癒しとされており、尾木氏はLOVOTにはそのセラピー効果が多くあると言う。「こんなに大きな効果があるんだったら全国の各中学校も含めて、教室に一体ずつLOVOTくんが来てほしいなと思いますね」とその確かな効果を実感している様子だった。

新型コロナウイルスによる長期休校でICT教育の遅れが浮き彫りとなった今、それは教育現場で大きな課題となっている。しかし学習面ばかりにスポットが当たり、メンタルケアまではあまり対策がされていないようにも見える。ICT教育ももちろん大事だが、LOVOTと過ごす王子第二小学校の子供たちを見て尾木氏は、「メンタルケアの方がさらに重要」だと言う。

「クラスに一台で済むんだったらLOVOTの導入は可能じゃないかなという気がしたんです。やっぱりメンタルケアが今一番、学校教育では大変なんですよ」(尾木氏)

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コロナ禍によるピンチを、新しいテクノロジーと共に乗り越えていく王子第二小学校。「できないからやらないではなく、できることを探す」この姿勢は、今の世の中に最も必要な心得なのではないだろうか。LOVOTと共に過ごす子供たちからは、コロナ禍をものともしない明るい未来が見えるようだった。


尾木 直樹(おぎ なおき)さん
教育評論家。愛称「尾木ママ」として多数の情報・バラエティ・教養番組やCMにも出演しており、幼児からお年寄りにまで親しまれ、全国各地への講演活動にも精力的に取り組んでいる。これまでに230冊を超える著書(監修を含む)を上梓し、講演会は若年層を中心に超満員となっている。


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